今回学生編集部が訪れたのは、県の南部に位置する人吉市と水俣市。「国産のシャツ」を製造しているシャツ工場「HITOYOSHI(ヒトヨシ)」の代表取締役・工場長、竹長一幸さんと、発祥地である水俣で愛され続ける「水俣蜂楽饅頭」店長の吉岡和夫さんにインタビュー。手に取ってくれるお客様のために真摯に取り組む2人に話を聞いた。

袖を通せば、違いがわかる。

今、日本に流通しているシャツは海外で製造されているものが多い。そんな中、国内でシャツを製造しているのが、「HITOYOSHI」。「Made in Japan」のシャツをどのような思いで製造しているのか興味が湧き、「HITOYOSHI株式会社」を訪ねた。

国産のシャツを製造している工場。オリジナルブランドのほか、有名ブランドのシャツ製造も手がける。

 

熊本県人吉市の工業団地の一角にある、シャツファクトリー「HITOYOSHI」。日本では珍しくなった「国産」のシャツを製造する工場である。

もともとは、親会社であったシャツメーカーのシャツを製造する工場だったが、親会社がリーマンショックなどの社会的背景を受けて破綻。その後、現在の取締役で工場長の竹長一幸さんと、現在東京で営業を行っている代表取締役の吉國武(よしくに たけし)さんとが2009年にこの工場を買い取り、独立。2011年からはオリジナルブランド「HITOYOSHI」を立ち上げたという。

「もともと私は、大分の工業高校出身です。機械を扱う仕事に興味を持って、ミシンの修理やメンテナンスを行う仕事をしていました。そこから自然と洋服を縫うことを覚えて、『HITOYOSHI』の前身の工場に勤めていたのです」と竹長さんは語る。若い頃から洋服が大好きでもあったという竹長さん。機械と洋服の魅力、双方を知るからこそ、このシャツ工場が持つ底力を信じて、再建に臨んだのかもしれない。
現在、工場では、オリジナルブランドだけではなく、多くの有名ブランドも取り扱っている。「昔好きだったブランドや、憧れていたブランドに関わることができて、うれしい」と仕事の喜びを語ってくれた。

「小さい頃から好きだったブランド品の製造に携わっていることは、仕事のやりがいの1つです」と語る竹長さん。着用しているシャツは、着心地が良く、長持ちするように襟や袖の部分を定期的に変えるようにしていると自身のシャツへのこだわりも話してくれた。
現在は医療用ガウンの製造も行っており、1日に1,000枚のガウンと300枚のシャツの製造を行っている。ベテランから若手まで幅広い年代のスタッフが、1つの作業場で、シャツの製造に取り組んでいる

年間製造12万着のうち4万着は、同社のオリジナルブランドである「HITOYOSHI」のシャツ。そして、残りの8万着は、さまざまなブランドから委託されて製造するOEM生産である。「HITOYOSHI」のシャツのこだわりについて竹長さんは、「今まで、たくさんのブランドなどのシャツ製造に携わってきました。その経験を生かしながら、『自分自身が着たい』シャツを作る。これが、こだわりの1つです」と胸を張る。さらに、「この工場では大量生産は行っていません。ターゲットや取引先に合わせて小回りを効かせながら、1サイズ数枚とロット(1種類あたりの製造数)を小さくして、一つ一つのクオリティーにこだわっています。だからこそ、袖を通していただいた人には、着心地や仕立ての良さを体感することで“なるほど”と納得していただける品質になっているはず。商品の魅力は“商品”で語る、そんなシャツ作りができていると思います」。

衣料品市場で海外産が約97%と大部分を占める時代に、「HITOYOSHI」が「国産のシャツ工場」として生き残っている理由を尋ねると、「海外ではできない3点の強みがあります。まず、『少ない量で生産できる』こと。海外は大規模工場ばかりなので、少量生産は受け付けないのです。次に、『納期が短くても生産できる』ことです。海外では生産から配送まで平均で3ヵ月程かかります。しかし『HITOYOSHI』は製造・配送まで、早ければ発注を受けてから2、3週間と短い期間で可能です。最後に、『複雑な仕様を作るための技術がある』ことです。海外では、複雑な仕様や難しいデザインは受け付けてもらえないケースがあります。この3点の強みを把握し、しっかり生かせているからこそ、『国産のシャツ工場』として続けられているのだと思います」と語ってくれた。

裁断、縫製、仕上げの3つの工程がある。「裁断」ではCADというソフトを用いて、生地を製図していく。無駄がないように、敷き詰めて、シャツのパーツを作っていく。

今後の展望について竹長さんは、教えてくれた。「時代に合わせて工場を変えていくこと。新型コロナウイルス感染症に対応し、生地の素材や機械の部品を変え、医療用ガウン製造に早急に切り替えができたように、ニーズに対して柔軟に小回りを利かせられる会社でありたい。そして、ものづくりが脚光を浴び、『作り手』の存在感がもっと表に出ていく、そんな社会の担い手になれれば」と竹長さん。「熊本の方にも、さまざまなブランドのシャツを手がける工場が地元にあることを、ぜひ知って欲しい。そして、実際に「HITOYOSHI」のシャツに袖を通して違いを実感して欲しい」と語ってくれた。

1枚1枚丁寧に手作業で作られたシャツ。百貨店のシャツ売場やオンラインストアでの販売を行っている。熊本では熊本市にある「鶴屋百貨店」で購入が可能。

 

 

DATA

HITOYOSHI株式会社

所在地|人吉市鬼木町1751-1
電話番号|0966-23-2612
営業時間|8:00〜17:00
定休日|日曜・祝日・会社指定休日


お客さまを第一に、こだわりと誇りを

熊本県民なら誰もが知っている「蜂楽饅頭」。老若男女から愛される饅頭のおいしさの秘密、そして饅頭作りに対する姿勢・こだわりを伺うために、「蜂楽饅頭」発祥の地である水俣市のお店を訪ねた。

熊本の人々から愛され続けるお店、「水俣蜂楽饅頭」。黒あん、白あんの饅頭を焼きたてで食べることができる。夏季限定のかき氷も人気商品。

熊本のソウルフードの1つにも数えられる「蜂楽饅頭」は、熊本市上通アーケード内など複数の店舗を展開しているが、実は水俣市が発祥の地。昭和28年(1953年)に水俣市で創業した。初代社長が養蜂業を営んでおり、「蜂蜜を使って何かできないか」という考えから饅頭を作ったのが、その始まり。「蜂楽饅頭」という名前も「蜂蜜」に由来しているそうだが、決める際は、お客様へのアンケート調査でもっとも人気が高かった「蜂楽」を採用したのだそう。「水俣蜂楽饅頭」の店長の吉岡和夫さんは、父の跡を引き継ぎ、27年間「蜂楽饅頭」に携わってきた。

国産のみの原料を使用した饅頭づくり、手間をかけて作ることでお客様のためになればうれしいと語る吉岡さん。
「饅頭作りを通して多くの方々と出会った」と語る吉岡さん。「蜂楽饅頭」発祥の地である「水俣蜂楽饅頭」には、多くのメディアが取材に駆けつける「

「蜂楽饅頭」のこだわりについて吉岡さんは、「小豆は北海道産を使用しています。さらに、小豆の選別もお店独自の基準を設けています。生地には八代でとれた蜂蜜を使用。『国産のものを使用する』ことが、大きなこだわりです」と語ってくれた。他にも、作り置きをしないで焼きたてを提供する、焼く時はガスではなく電気を使うなど、全ての工程にこだわりを持って饅頭作りに取り組んでいる。それは、全て「お客さまを第一に」考えている初代から伝わる心遣いからだそう。「蜂楽饅頭」は、創業当時から黒あんと白あんの2種類しか提供していない。それは、「保存料を使用しない、ありのままの饅頭を提供する」というお店のポリシーからだ。

ちなみに、「水俣蜂楽饅頭」では白あんの方が黒あんよりもやや人気が高いという。普段は地元のお客さまでにぎわい、休日には様々な人たち立ち寄ってくれるそうだ。「冷凍して自然解凍してから食べる方や、おやつではなくご飯として食べる方もいらっしゃるんですよ。いろんな食べ方で楽しんでいただいています」と吉岡さん。

電気を使って焼くことによって、もちもちとした食感になる。あんも前日に時間をかけて手作りで作られている。焼き方や材料など、あらゆることにこだわりを見つけることができる。

吉岡さんオススメの食べ方は「薄く衣を付けて油で揚げる食べ方」とのこと。現在では、熊本県内のみならず、福岡県・宮崎県・鹿児島県など合計17店舗のお店がある。今後の展望の1つとしては、「長崎県、佐賀県、大分県にお店がまだないため、九州全部にお店ができたらいいと思います」と語る。お客さまがおいしいと言ってくれることが喜びであり、やりがいだそう。そのために、「これからも変わらない味を維持していきたい。そして、おいしい饅頭を提供するので、ぜひお越しいただきたい」とメッセージをいただいた。老若男女問わず愛される「蜂楽饅頭」。熊本を訪れた際は、このこだわりのおいしさを楽しんでほしい。

生地にはたっぷりと国産蜂蜜を使用しており、黒あん、白あんの饅頭2種類を楽しむことができる。もっちりしつつも香ばしい皮とあんがマッチして、クセになるおいしさ。

 

 

DATA

水俣蜂楽饅頭

所在地|水俣市旭町2丁目1-1
電話番号|0966-63-2673
営業時間|9:00~17:30(予約受付可)
定休日|火・金曜

【学生メンバー】
永田拓巳(熊本県立大学4年)
島田凜太郎(熊本県立大学3年)カメラマン
西村成留(熊本県立大学3年)
高瀬颯太(熊本県立大学3年)