みんなが笑顔になるように、活力に満ちたまちづくりにと、県内各地で奔走する若者たちがいます。そんな“元気で明るい熊本をつくるひと”の日々をご紹介するシリーズです。今回は、「第54回技能五輪全国大会」建具部門で金賞を受賞したものづくりの若き担い手・古見秀嗣さんの木工に対する思いをお届けします。

  • 日々の積み重ねが技術の礎、技能五輪で日本一に
  • 仕事とは何かを知り、創作の視点が変わった
  • 夢に見た世界の舞台へ羽ばたく思いを胸に

日々の積み重ねが技術の礎、技能五輪で日本一に

入社後、道具の手入れや使い方など基礎の基礎から学んだ

課題発表は全国大会の2カ月前。まさに時間を惜しんで練習に明け暮れた

 次世代のものづくりを担う若き技能者が集い、その技術を競う「技能五輪全国大会」は、平成28年度に第54回を数える歴史ある競技会です。40もの競技種目がある中で、建具部門で最高賞となる金賞を受賞したのが、株式会社ナスク(合志市)で木工技術者として研鑽(けんさん)を積む古見秀嗣さん。建具や家具の製作を通して、腕利きの“木工職人”を目指し、日々技術を磨き上げています。

 平成28年度の技能五輪の舞台は、山形県天童市。同市の特産である将棋の駒をモチーフに、山形県のシンボルマークを入れた作品が、課題として出題されました。2日間、計11時間30分にわたる時間との闘い。発表されていた課題の一部が当日に変更されるなど、真の実力が試されます。「作業中、目先には観客の姿があり、審査員の厳しい視線にさらされながら、これまでにない緊張の連続でした。それに打ち勝つために必要なのは、精神力。これまで積み重ねてきた練習が自信や力となって、乗り越えることができました」と古見さんは語ります。

仕事とは何かを知り、創作の視点が変わった

入社後に最初に作った自分の道具入れ。裏表で配色を変えるなど古見さんのセンスが光る

70人の職人たちが建具や家具製作に取り組む工場は、活気にあふれている

 熊本工業高校インテリア科で学ぶうちに木工への興味が深まり、同社の門を叩いたという古見さんは、入社3年目。学校でさまざまな技術を習ったものの、職人としては素人同然で、先輩たちの作業を手伝いながらその技術を習得していったといいます。「入社当時は、学校の授業と同じような感覚で仕事をしていましたが、ある日工場長から『今、何をやっているんだ?』と声を掛けられたんです。何気なく工程の名称を答えたら『違う、仕事だろ?』と。作ることが目的じゃない、お客さんに喜んでもらうために作っている。それが“仕事”なのだと気付いた瞬間でした。それからは意気込みも変わったような気がします」。

 さらに、これまで技能五輪へ出場してきた先輩たちの存在が、古見さんをよりいっそう奮い立たせました。「教えてもらうことをやればよかった高校時代と違い、今は先輩方の教えを自分のものにしていこうと試行錯誤の毎日です。技術を一つ手にするたびに達成感があります。指導してくださる先輩方の思いに応えるためにも、技術の向上を目指して練習を続けています」。

夢に見た世界の舞台へ羽ばたく思いを胸に

「技術力と人間力は、ものづくりの両輪。どちらが欠けても成り立たない」と語る永田社長

世界大会の課題発表は7月。想定した課題で研鑽(けんさん)を積む

 熊本県では、技能五輪全国大会の各部門へ優秀な技能者を輩出しています。若い世代が目標を持って、自ら努力することに大きな意義があると語るのは、同社代表取締役・永田利一さん。「目標ができると、自主的に仕事に取り組むので技術もぐんと伸びていきます。初心で目指したことを貫く決意は、自らの感覚や技術を磨き、人間力を育てる。ひいては、熊本の産業力の底上げにもつながりますね」。

 10月にアラブ首長国連邦で開催される国際大会に、日本代表として出場する古見さんは、現在新たな課題に向き合い、日本を代表する技術者として切磋琢磨しています。「金メダルを受賞したといっても大会の中だけのこと、まだまだ未熟です。先輩方が私の目標。いつか追い越せるような技術を身に付けて、後輩たちを指導しながら一緒に育っていきたいですね」。仕事を終えた後の自主練習、休日返上も当たり前という古見さんに、永田社長も先輩たちも心からのエールを送ります。ものづくりの若き担い手が夢見た世界の舞台に立つ日は、もう目前です。

>>技能五輪全国大会(中央職業能力開発協会)
>>株式会社ナスク