「Jump Up! Kumamoto 2017」では、平成28年熊本地震で被災した各地の復興レポートを随時お届けします。今回は、熊本有数の観光地として知られる「水前寺成趣園」の復興への歩みをご紹介します。

本震から一夜、鳥居が崩壊し、湧水も枯れた

地震直後の正門参道。巨大な石の鳥居が崩壊したが、幸い人的被害はまぬがれた。「鳥居も灯籠も、全部道路側ではなく、境内に向けて倒れました。神様が守ってくださった」と上村さん

水前寺成趣園の中にある出水神社には、細川家歴代藩主が祭られている。熊本地震で鳥居や社殿も被災。現在は、社殿の復旧工事は終わり、地震前と変わらぬ神社の営みが続いている

 平成28年熊本地震が発生し、新聞やテレビなどで県内の被災情報が飛び交いました。痛ましい被災状況の中でも「水前寺成趣園の湧水が枯れた」という一報がもたらされた時の衝撃を記憶に留めている方も多いでしょう。

 前震では大きな被害もなく、安心していたと語るのは、出水神社事務局長の上村秋生さん。

 本震の瞬間は、まるで爆弾が爆発したような音がして、正門参道の大鳥居、北参道の鳥居はぽっきりと折れ、大半の灯籠も倒れてしまいました。

 「夜明けを待って、同じ園内にある水前寺成趣園に来てみると前日と状況は一変、池の水がなくなっていて、まるで狐につままれたようでした」と上村さんは当時を振り返ります。

 ポンプで給水を続けても水位に変化はみられません。「歴史と伝統を次世代へ引き継ぐ使命と、公園として観光客や地域の方々に親しんでもらう役割もあります。私たちにできることを模索する毎日でした」と上村さん。

 ある日、干上がった池の水溜まりの中に湧水孔が見えたという報告が届きました。

 「まだ、湧水が復活する可能性がある!」

 その時、上村さんの脳裏をよぎったのが「湧水復興」という言葉でした。

子どもたちも一緒に、合言葉は「湧水復興」

昨年7月に開催された「子どもお掃除プロジェクト」。子どもたちが大勢参加し、池の掃除に取り組んだ。池から引き上げた泥や砂をバケツリレーで運ぶ子どもたち

現在、湧水に満たされた水前寺成趣園は新緑に輝くよう。池の中では、錦鯉やスッポンたちが生き生きと泳いでいる

水前寺成趣園の参道には、いきなり団子や伝統工芸品など、熊本自慢の品々が並ぶお店がずらり。参道散策もお楽しみの一つに

 「湧水で再び美しい水前寺成趣園を取り戻そう」という決意で最初に取り組んだのは池の清掃です。「これまでの感謝を込めて、泥や砂を上げて掃除をしようと考えました。せっかくなら市民の皆さんや子どもたちにも参加してもらい、みんなで祈願しようとイベントを開催したんです」。

 地震直後の5月21日・22日の2日間、県内外から延べ900人もの参加者が集い、清掃活動に取り組みました。普段入ることのできない池の中から見る景色、池にすむ生物の観察など、参加者にとっても有意義なひとときとなりました。

 不思議なことにその前後から水位が回復し、約1カ月ぶりに開園。5月中は拝観料を無料にしました。

 6月には水位も元に戻り、7月には狂言師の野村万作さんらを招いた「熊本地震復興支援狂言」や「子どもお池掃除大作戦」、8月には浴衣を着た人は入園料が無料になる「水前寺成趣園ゆかた月間」など、さまざまなイベントが開催できました。今年5月28日には、震災後一年を記念して「湧水復活感謝デー」を開催しました。熊本の復興に根差した取り組みは、今も続いています。

 東海道五十三次を模したといわれる日本庭園や錦鯉が泳ぐ池は、地震前の美しさを取り戻し、園内は多くの人々でにぎわっています。今も壊れた鳥居の再建をはじめ、課題はまだ残されていますが、「私たちには伝えるべき歴史や文化があります。美しい日本の文化に触れ、憩える公園として、地域と一体となって一歩ずつ進んでいきます」と、上村さんは力強く語ります。