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I LOVE くまもと vol.23 夢と幸せがいっぱいの小さな集落の小さなパン屋

くまもとには、さまざまな思いを抱いて県外から移り住んできた人がいます。
「I LOVE♡ くまもと」は、移住者が感じる“くまもと”を、日々の暮らしを通して語ってもらうシリーズ。
今回は、冷たくておいしい水が湧き出ることで知られる「吉無田(よしむた)水源」のすぐ近くでパン屋を営む、酒向司さん・文子さんをご紹介します。


おいしい水が湧き出る田舎で理想とするパン屋を開く

熊本県のほぼ中央に位置する上益城(かみましき)郡御船町(みふねまち)。市街地から遠く離れた山あいの集落に、週末だけオープンする小さなパン屋があります。営むのは、岐阜県で生まれ育った酒向司さんと、御船町出身の文子さん。大学のサークルで先輩・後輩だった二人は、お互い福岡で働いた後、10年前、結婚を機に御船町に移り住みました。そして、熊本市内のパン屋などでの修行を経て、2011年11月、念願のパン屋をオープンさせました。

「実は大学の専攻も福岡での仕事も、パンづくりとは全然関係ありません」と司さん。「ただ、自分で何かを作りたいと考えていて。パンが好きで、よく食べ歩きをしていたので、パン屋になろうと思ったんです」。司さんの思い付きに、文子さんは、やりたいことがあるならと、特に反対はしなかったとか。「それに、夫婦で一つのことをできるのはいいな、と思いました」。

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道端の看板がなければ通り過ぎてしまいそうなほど集落に溶け込んだ佇まいの酒向さんの店

二人が理想としたのは、“素朴なパンを売るお店”。店を構える場所は、あえて田舎を探しました。それは文子さんの希望でした。「御船町で育った私がそうだったように、思う存分自然と触れ合うことが子どもにとってかけがえのない体験になると思いました。自然豊かな環境で子育てしたかったのです」。選んだのは、文子さんの実家よりさらに車で30分近く山あいに入り込んだ土地。周囲はお年寄りばかりが暮らす、小さな小さな集落でした。

近くに「吉無田水源」があり、その水を使えることも大きかったそうです。「パン作りに水は欠かせません。味は水に左右されますから」と話す司さんの隣で、文子さんもうなずきます。「水源の水で作ると生地そのものが違う気がするんです。引きが強いっていうか・・・。おいしくなるような気がする。水が良いせいか農産物もおいしいので、できるだけパン作りの材料にも取り入れるようにしています」。あとは、“愛情”というスパイスを加えるのを忘れないことが、おいしいパン作りのコツだと、司さんは言います。

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パンを焼くのは司さん、陳列と接客は文子さんと役割分担

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司さんが作るパンは基本的にシンプル

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水をくみに訪れる人が絶えない「吉無田水源」

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子どもたちに人気の高い、チョコクリーム入りのパン“ひるねぐま”


集落の人々に見守られながらこの場所でずっと暮らしていく幸せ

週末だけ開くパン屋の一日は、金曜の夜から始まります。夕方仮眠をとった司さんが、文子さんと子どもたちが眠りに就くのと入れ替わるように生地作りに取り掛かるのは、土曜の午前0時。そして、朝日が高く昇るころには、店の棚にいろいろな種類のパンが並び始めます。ほぼ全てのパンが焼き上がるお昼ごろになると、口コミを聞いて遠方などからお客さんが次々と訪れ、並べた端からパンは売れていきます。また、近所のお年寄りたちも、てくてく歩いてやって来ては、酒向さん夫婦と世間話をしながらパンを買って行きます。

9歳、6歳、3歳の3人の男の子がいる酒向さん一家。司さんと文子さんは、できるだけ近所のお年寄りと子どもたちを交流させたいと考えています。長男は、この集落で実に12年ぶりに誕生した子どもでした。酒向さん一家を含め9軒しかない集落には、今も酒向さん宅以外に子どもはいません。「同年代の遊び相手が近くにいないという悩みがないわけではないけれど、お年寄りの皆さんとのお付き合いは、それを補って余りあるものがあります」と司さん。

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こぢんまりとした店内にはたくさんの種類のパンが並ぶ

近所のお年寄りたちは、酒向さんの3人の子どもを実の孫のようにかわいがってくれるそうです。小学校の発表会を見に来てくれたり、「○○ちゃんが好きな漬物ば作ったけん」と持って来てくれたり。「たぶん子どもたちは、実の祖父母と近所のおじいちゃん・おばあちゃんとの区別がついていないと思いますよ」と文子さん。「皆さんが『子どもたちから元気をもらう』と言ってくださるたび、幸せだな、と感じています」。

集落の行事には積極的に参加し、依頼される仕事も全部引き受けているという二人。最近では、町内や熊本市内で催される物産展などに、町で採れたブロッコリーやカボチャなどを使ったパンを出品するなどして、地域起こしにも一役買っています。

子育てが一段落するころには、毎日店を開けられるようになるのが夢だと語る二人。「この場所で、ずっとパン屋を続けて行こうというのは、住み始めた時から決めています。田舎だからこその強い地域のつながりがありがたく、毎日、とても楽しいです」。小さな集落の小さなパン屋には、大きな夢と幸せが溢れています。

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店内には子どもを遊ばせたりお客さんがお茶したりするためのスペースが設けられている

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「お父さんのパン、おいしいよ!」

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古いテレビとミシンは、岐阜から持ってきた司さんのおばあさんの形見


移住・定住のコツ 「助け合う」

田舎は互いに助け合うことが必要。困っておられるお年寄りがいればお手伝いしますし、私たちも分からないことを教えていただいています。つながりを大切にしたいですね。

御船町ってこんなところ

日本で初めて肉食恐竜の化石が発見された“恐竜のまち”。豊かな緑と水に恵まれ、古い石橋が点在する、自然と歴史のまちでもあります。

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八勢目鑑橋