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和紙とのりだけで生み出す伝統
山鹿灯籠

県内各地の特産品とそれを販売する物産館、そしてくまもとならではの“モノづくり”などくまもとから発信するさまざまな“つくる”を伝える「メイドinくまもと」。
今回は、昨年、国の伝統的工芸品に指定された山鹿市に伝わる伝統工芸「山鹿灯籠」をご紹介します。

伝統の祭りが守り育てた「山鹿灯籠」の技術

「山鹿灯籠」の歴史は、九州巡幸の途中、霧に行く手を阻まれた第12代景行天皇を、山鹿の里人がたいまつをかざしてお迎えしたという伝説にまでさかのぼります。それ以来、天皇が滞在された大宮神社に毎年灯火を献上。室町時代には灯火が紙で作った「金灯籠(かなとうろう)」に変わり、その後技術の進展とともに、寝殿造り・座敷造り・城造りなど種類も多様に、精巧になったのが、現在の「山鹿灯籠」です。

「山鹿灯籠」の作り方には一貫した鉄則があります。まず、木や金具は一切使わず、和紙と少量ののりだけで作られること。また、柱や障子の桟(さん)に至るまで中が空洞であること。そして、実際に建造物の前に立って眺めているような臨場感を出すため、縦横の比率を微妙に変えるなど単純に縮尺を合わせたのではない、独自の寸法で作られていることです。これらの鉄則により、驚くほど軽量ながら、まるで木材や金属で作られたような重厚さを感じさせる「山鹿灯籠」が出来上がるのです。

「山鹿灯籠」を語るとき、忘れてはならないのが「山鹿灯籠まつり」。毎年8月15日から始まる祭りの日、丹精込めて作られた灯籠は奉納団体によって町中に美しく飾られます。そして16日夜には、町衆に担がれて大宮神社へと運び込まれ、奉納されます。また、「灯籠踊り」では、女性たちが頭上に「金灯籠」を載せて幽玄に踊ります。山鹿の町に深く根付いた「山鹿灯籠」は2013年12月26日、国の伝統的工芸品に指定されました。

伝統的工芸品の指定について審議する産業構造審議会の委員に「これほどの技術がなぜ今まで指定を受けなかったのか」といわしめた「山鹿灯籠」。灯籠制作者は灯籠師と呼ばれ、高い技術と熟練を要するため一人前になるまで10年はかかるとされています。現在、男性3人、女性4人の計7人が認定されており、さらに伝統の技を受け継ごうと志す若い世代が、日々修行に励んでいます。

写真:大宮神社
写真:灯籠殿内観

大宮神社境内にある「燈籠殿」には祭りで奉納された灯籠が一年間展示される

写真:山鹿灯籠まつりのにぎわい

8月16日夜、「ハーイとうろう、ハイとうろう」の掛け声とともに大宮神社に灯籠が奉納される

「山鹿灯籠」の伝統と技術を担う灯籠師たち

「山鹿灯籠」を全国区に!
灯籠師としての決意を胸に

江戸時代、宿場町として栄えた往時の面影が残る豊前街道沿い。大正時代に銀行として建てられた趣ある建物は、現在、「山鹿灯籠民芸館」として「山鹿灯籠」の展示・保存などを行っています。その裏手にある「山鹿灯籠民芸館」の制作工房で、灯籠師・田中久美子さんは灯籠を作っています。

物を作ることが好きだった田中さんは、今から20年ほど前、市の灯籠教室に通い始めたことがきっかけでこの世界に足を踏み入れました。最初は趣味のつもりでしたが、一年ほど経つころには灯籠師を目指すことを決意。会社勤めをやめ、ベテラン灯籠師の中島清さんに弟子入りします。そして修行の末、昨年ついに灯籠師の仲間入りを果たしました。灯籠師の誕生は8年ぶりのことでした。

「灯籠づくりの面白さは、1枚の紙から始まり立体として完成するまで、自分で作り上げられるところ。好きなことを一日中やっていられる、工作好きにはたまらない職業ですよ」とにこやかに話す田中さん。灯籠を間近で見た人が、その精緻さに驚いてくれることがうれしいそうです。「国の伝統的工芸品の指定を受けたからには展示会への出展や実演会などに積極的に参加するなどして、知名度を全国区にしていきたい」と、灯籠師としての決意を語ってくれました。

写真:灯籠
写真:灯籠を制作する田中さん

灯籠師・田中久美子さん。 技術や経験を踏まえ、山鹿灯籠師組合に認定された者が灯籠師を名乗れる

写真:民芸館の一角に田中さんの工房はある

民芸館の制作工房が田中さんの仕事場

写真:種類ごとに箱に分けられた灯籠のパーツ

「金灯籠」を作るための細かいパーツはすべて和紙

写真:曲線部のパーツ

曲線部分はのりしろを作らず、紙の厚さだけで貼り合わせる。灯籠師の腕の見せどころだ

写真:阿蘇神社の灯籠

工房に飾られた先輩灯籠師の作品。ゆうに10年以上は経つが、鮮やかさは当時のまま

くまモン:紙とのりだけで出来てるなんて思えないモン!!

未来の灯籠師たちへとつなぐ伝統と
吹き込まれる新しい風

そんな田中さんに続けとばかりに灯籠師を目指す3人の“卵”がいます。その一人、坂本ゆかりさんは、引っ越してきた山鹿で、祭りの時に飾られた灯籠を見た瞬間、「絶対灯籠師になろう!」と心に決めたそうです。「初めて目の前で見た灯籠の素晴らしさに感動しました。どうしたらなれるか分かりませんでしたが、通いだした灯籠教室では一番乗りして、先生の目の前の席を確保しました」。

この“一番乗りして先生の目の前”は、実は田中さんも同じだったそうです。教科書などない灯籠づくりの技術は、師匠である先輩灯籠師からじかに教わって学んでいくしかありません。師匠にいかに近い場所にいるかがとても重要なのです。このエピソードからも、田中さんと坂本さんの熱意が伺えます。

また、最年少の“卵”・24歳の中村潤弥さんも熱意にあふれた一人。中学校の職場体験で見た灯籠師の技に魅せられ、高校卒業後、10代でこの世界に飛び込みました。現在は最長老の灯籠師・徳永正弘さんに師事しています。「今まで大切に受け継がれてきたものなので、半端な気持ちではなく、祭りのため、地域のために働いているんだという責任を持って仕事をしたいです」と語る、力強いまなざしが印象的です。

そして、中島弘敬さんは、田中さんと坂本さんの師匠である灯籠師・中島清さんの息子さんです。幼い時から灯籠づくりを見てきた弘敬さんは、これからの「山鹿灯籠」について、「伝統を守るのは当然で、そこに新しいものを求めていく気持ちが必要でしょう。日用品としても使える生活に身近な作品も作っていけたらと思います」と話します。確実に伝えられていく伝統の技と若い世代によって吹き込まれる新しい風。「山鹿灯籠」はこれからも色あせることなく、大切に受け継がれていくことでしょう。

写真:坂本ゆかりさん肖像

坂本ゆかりさん

写真:中村潤弥さん肖像

中村潤弥さん

写真:中島弘敬さん肖像

中島弘敬さん

写真:山鹿灯籠民芸館
写真:山鹿灯籠民芸館内観

民芸館の中にはたくさんの灯籠が展示されている

山鹿灯籠民芸館

           
  • 開/9:00~18:00
  • 休/12月29日~1月1日
  • 料/一般210円、小中学生100円
      団体(15人以上)は一般168円、
      小中学生84円
  • 問/0968-43-1152
  • >>山鹿灯籠民芸館

燈籠殿

           
  • 開/8:00~16:30
  • 休/8月16日午後
  • 料/大人200円、小中学生100円
      団体(20人以上)は大人180円、
      小中学生80円
  • 問/0968-44-1257(大宮神社)
  • >>燈籠殿
写真:金閣寺の灯籠