暮らしに向き合える場所を求めて町屋は理想の住まいのスタイル
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井上さんは今年69才。大好きなアユ釣りに携わりながら暮らしている。井上さん自身も、何度も大物を釣り上げている。シーズンには、丸々と太ったヤマメが釣れることも。

 球磨郡相良村(くまぐんさがらむら)で、「くま川おとり鮎店」を営む井上則義さん。同郡多良木町(たらぎまち)出身の井上さんは、関西で暮らしていましたが、定年を機にくまもとに戻ってきました。その理由は、日本三大急流「球磨川」の支流「川辺川」。“日本一の清流”といわれる川辺川の美しさと、豊かさに引きつけられた井上さんは、大好きなアユを釣りながら、くまもと暮らしを満喫しています。

 子どもの頃から近くのきれいな川で遊んでいた井上さん。昭和30年代に集団就職でくまもとを離れましたが、関西で暮らしていたおよそ40年の間、帰省のたびにアユ釣りを楽しんでいました。「アユ釣りをするなら川辺川が一番。ほかの川に行ったこともあるけど、やっぱり川辺川に勝る川はなかったですね」と話す井上さん。
 いつかは、故郷くまもとに戻ってアユ釣りを楽しむ暮らしがしたい、という夢がかなったのは9年前。定年を迎えた井上さんは、奥さんやお子さんを関西の家に残し、「単身赴任」という形で念願のおとり鮎店を開業しました。それほどまでに、井上さんは川辺川に魅せられてしまったのです。

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おいしいアユが釣れるのは、10月中旬まで。井上さん自慢のホームページで情報をゲットして、川辺川に出掛けよう。
>> http://www.geocities.jp/kawabeayetarou/

※アユの友釣りとは
 縄張りをつくるアユの特性を利用した漁法。“おとり”となるアユに針を仕掛け、アユの縄張りの中に投入。すると、“おとり”を攻撃してきたアユが釣れる。

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散歩も楽しめる土手沿いには、老人会の皆さんが植栽した花々。季節ごとに色とりどりの表情を見せてくれる。遠くに吊り橋が見えるこの風景を井上さんも気に入っている。

 井上さんのおとり鮎店には、遠くは北海道からも釣り人が訪れています。「常連さんが多いんですよ。シーズンになると、長い休暇を取って訪れる人もいます。一度川辺川で釣りをしたら、ほかの川では物足りなくなってしまうんですよ」と井上さん。これほどまでに釣り人たちを引きつける清流・川辺川の魅力。それは、体長が30センチを超える“尺アユ”にあります。川辺川のアユは、ほかの川で釣れるアユに比べて大きく、香りも良くて味も抜群。そんな尺アユを狙って、全国から訪れる釣り人が絶えないのです。「アユの友釣りでは、釣り人の腕が試されます。そんなところも釣り人にとっては、面白いところなんですよね」と井上さん。また、井上さんの自慢は、毎日更新する“日本一早いアユ釣り速報”。お客さんたちの釣りの成果やその日の川の様子をホームページ上で報告しています。「川の状況は刻々と変わっていきます。遠くから来られる釣り人にとっては特に、今どれくらいのものが釣れているのかとか、川の状態が大切なんです」。

 井上さんは、釣りを楽しむだけではなく、川辺川を守る運動も行っています。「美しい川を守るためには、山を守らなければなりません。シカやイノシシが増えすぎて、山が荒れている問題について川辺川の上流にある五木村の人たちと話し合いをしたりしてきました。川の問題は、一つの地域だけの問題ではありません。川の周りの地域や、そこに住んでいる人すべてが関わることなのです」と話す井上さん。山に木を植えたり、川辺川沿いには花々を植えたり。まるで、いつもアユ釣りを楽しませてくれる川辺川に恩返しをしているようです。

「川の流れが交わる辺りがポイントですね」と“穴場の釣りスポット”にも案内しれくれる。この日も、胸まで川に浸かってアユを狙う釣り人たちの姿が。

 およそ40年も都会で暮らしていたため、“田舎”に戻ったばかりのころはとまどいもありました。「“親しき仲にも礼儀あり”という言葉が身に染みました。田舎の小さな地域だからこそ、一声掛け合うこと、コミュニケーションを取ることの大切さを感じましたね」と話します。そんな経験から、遠方から訪れる人や初めて訪れる人にも釣りの仕方をアドバイスしたり、宿を紹介したりと積極的に触れ合うようにしています。「川を守るには、そこに住んでいる人だけではなく、釣りをする人たちにもマナーを守ってもらわないといけませんからね」。井上さんにとって川辺川、そして球磨川は“宝の川”。大好きなアユ、人とのつながり、さまざまな“宝”を育んでくれる川を、井上さんはこれからも守り続けていきます。

川辺川ギャラリー

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